キツネは、山林と農地、草地などが入り組んだ環境を利用するイヌ科の中型哺乳類です。

本州、四国、九州に生息するものは、一般にホンドギツネと呼ばれます。
農地や河川敷、住宅地周辺でも確認されることがあり、野ネズミ、鳥類、昆虫、果実などのほか、農作物、生ごみ、ペットフードなどを利用する場合があります。(環境省)
キツネの特徴
体は細長く、脚が比較的長いのが特徴です。
頭から胴までの長さはおおむね50~80cm、尾の長さは約25~40cm、体重は4~7kg程度です。
顔は細く、鼻先が尖っています。耳は大きく、三角形に立っています。
体毛は赤褐色や黄褐色で、腹部や頬は白っぽく見えます。脚の先は黒っぽく、尾は太く長いのが特徴です。尾の先が白い個体もいます。
タヌキと比べると、体が細く、脚と尾が長く見えます。(東武動物公園)
キツネは動物食を中心とする雑食性です。
野ネズミ、ウサギ、鳥類、昆虫などを捕食するほか、果実や農作物も食べます。農地や住宅周辺では、トウモロコシ、野菜、ニワトリ、生ごみなどを利用する場合があります。
キツネの主な痕跡
足跡
キツネの足跡には、次のような特徴があります。
- 指の跡が4本ある
- 指先に爪の跡が残ることがある
- 全体的に縦長で細く見える
- 左右の指が大きく広がりにくい
- 足跡が直線的に続くことがある
- イヌやタヌキの足跡と似ている
タヌキの足跡と比べると、キツネの足跡は縦長で、指先が外側へ広がりにくい傾向があります。
ただし、地面の状態や歩き方によって形は変わります。足跡だけでキツネと断定せず、ふん、巣穴、食害、センサーカメラの映像などを組み合わせて確認します。
ふん
キツネのふんは、細長く、片側の先端が細くなっている場合があります。
食べたものによって形や色は変わり、ふんの中に動物の毛、骨、昆虫の一部、果実の種などが含まれることがあります。
道路、農道、石の上など、周囲から目立つ場所に残される場合もあります。
ただし、ふんの形や場所だけで動物種を確定することはできません。タヌキ、テン、イヌ、ネコなどのふんと区別しにくい場合があります。
ふんを処理する場合は、素手で触らず、手袋やマスクを使用してください。処理後は手や使用した道具を洗います。
巣穴
キツネは、繁殖や子育てのために地面へ巣穴を掘ることがあります。
林縁、草地、農地周辺の斜面、土手、河川敷、建物の下などが利用される場合があります。
穴の周囲に次のような状況が見られる場合は、使用中の巣穴である可能性があります。
- 新しい土が外へ出ている
- 同じ場所に足跡が繰り返し付いている
- 動物の毛や食べ残しがある
- 周辺の草が倒れている
- 親や子どもの出入りが確認される
- 巣穴の近くにふんがある
キツネは自分で巣穴を掘るほか、ほかの動物が掘った穴や、建物下の空間を利用する場合があります。(東北大学)
使用状況が分からない穴を、すぐにふさがないでください。
食べ跡
キツネによる被害では、農作物の一部だけがかじられたり、ニワトリなどの羽毛や食べ残しが巣穴付近に残ったりする場合があります。
トウモロコシでは、収穫前の実の先端部分だけがかじられることがあります。
野菜類では、実をかじるほか、苗を踏み荒らす、地面を掘り返すといった被害が起こる場合があります。
ただし、食べ跡だけでは、タヌキ、アライグマ、ハクビシン、カラスなどと区別できないことがあります。
キツネによる主な被害
農地・畜産への被害
キツネは、野ネズミなどを捕食する一方で、農作物や家禽類を利用することがあります。
農地や畜産施設では、次のような被害が起こる場合があります。
- トウモロコシの実をかじる
- キュウリなどの野菜を食べる
- 根菜類をかじる
- 苗や葉物野菜を踏み荒らす
- 農地を掘り返す
- ニワトリやヒヨコを捕食する
- 合鴨農法で利用するカモ類を捕食する
- 鶏舎や家畜施設の下を掘って侵入する
- 飼料や家畜の餌を食べる
農林水産省のマニュアルでは、特にニワトリやカモ類への被害は、子育て期に多く発生する傾向が示されています。物理柵だけでは、柵の下を掘られて侵入される可能性があります。
住宅周辺・生活環境への影響
住宅周辺では、次のような状況が見られることがあります。
- 生ごみやコンポストへの接近
- 屋外に置かれたペットフードを食べる
- 家庭菜園の作物を食べる
- 庭や花壇を掘り返す
- 物置や建物の下を利用する
- 床下や土手に巣穴を作る
- 靴、手袋など屋外の物を持ち去る
- ふんを残す
- 飼い犬や猫へ接近する
- 道路へ飛び出す
キツネを見かけただけで、直ちに被害が発生しているとは限りません。
まずは、餌になるもの、足跡、ふん、巣穴、食害、移動経路などを確認します。
ただし、野生のキツネへ近づいたり、触ったり、餌を与えたりしないでください。人の食べ物を得る経験をすると、住宅地へ繰り返し現れる原因になります。(札幌市)
キツネへの対策
1.餌になるものを取り除く
キツネを住宅や農地へ引き寄せるものを減らします。
- 生ごみを屋外に放置しない
- ごみ容器のふたを固定する
- ペットフードを夜間に残さない
- 鶏や家畜の飼料を密閉して保管する
- 落果や収穫残さを片付ける
- 廃棄する野菜を農地に放置しない
- コンポストを適切に管理する
- 動物の死骸や魚の残さを放置しない
- 野生動物へ餌を与えない
餌を与えるつもりがなくても、食べられるものを屋外へ残せば、結果的に餌付けになります。
人から餌を得ることを覚えた個体は、同じ場所へ繰り返し現れる可能性があります。(札幌市)
2.侵入場所と移動経路を確認する
農地、鶏舎、物置、住宅周辺を確認し、次のような場所を探します。
- 柵と地面の隙間
- 柵の下が掘られている場所
- ネットの破れ
- 鶏舎や小屋の開口部
- 床下へ続く穴
- 土手や斜面の巣穴
- 繰り返し足跡が付いている通路
- 河川敷や藪から続く獣道
- 食べ残しや羽毛が落ちている場所
確認した場所は、写真に残しておくと、その後の比較や相談に役立ちます。
センサーカメラを使用すると、動物種、出没時間、頭数、移動方向などを確認できる場合があります。
3.柵の下部を補強する
キツネは地面を掘る力が強く、柵の下から侵入することがあります。
物理柵を設置する場合は、次の点を確認します。
- 柵と地面の隙間をなくす
- 柵の下部を固定する
- 裾を長めにして地中へ埋める
- 地中へ埋められない場合は、パイプなどで下部を固定する
- 通り抜けられない細かい目の資材を使う
- ネットの破れを早めに補修する
- 出入口を閉め忘れない
- 水路や排水口との接続部分をふさぐ
農林水産省のマニュアルでは、キツネ、タヌキ、アナグマなどを対象とする物理柵は、裾を掘られないよう固定し、目合い5cm以下の破られにくい資材を使用することが示されています。
4.鶏舎や小屋を補強する
ニワトリ、ヒヨコ、カモなどを飼育している場合は、夜間に安全な施設へ収容します。
- 扉を確実に閉める
- 金網の破れを補修する
- 床面や柵の下を掘られないよう補強する
- 屋根と壁の隙間をふさぐ
- 飼料を密閉容器へ保管する
- 施設周辺の草や資材を整理する
- 被害が続く場合は電気柵を検討する
柔らかいネットだけでは、破られたり、下を掘られたりする可能性があります。
鶏舎全体を囲うだけでなく、扉、床面、柵の下部など、侵入されやすい場所を重点的に確認します。
5.電気柵を適切に管理する
キツネなどの中型動物を対象とする電気柵では、地面に近い位置の電線間隔を狭くする必要があります。
農林水産省のマニュアルでは、中型動物に対する段張り方式では、電線の間隔を10cm以下にすることが示されています。
電線が地面に近くなるため、草や枝の接触による漏電に注意します。
- 電線の高さと間隔を確認する
- 地面の凹凸による隙間をなくす
- 草や枝が電線に触れないよう管理する
- 電圧を定期的に測定する
- 電源の入れ忘れを防ぐ
- アースを適切に設置する
- 支柱や電線の破損を補修する
- 出入口を閉め忘れない
電気柵は、設置しただけでは効果を維持できません。草刈り、電圧確認、破損部分の補修を継続します。
6.巣穴の利用状況を確認してから対応する
住宅、物置、土手などの穴をふさぐ場合は、内部にキツネが残っていないことを確認してください。
繁殖や子育てに利用されている巣穴を不用意にふさぐと、次のような問題が起こる可能性があります。
- 親や子どもを閉じ込める
- 別の場所を掘って脱出しようとする
- 建物や柵が破損する
- 内部で死亡し、臭いや害虫が発生する
利用状況が分からない場合は、すぐに封鎖せず、足跡、出入口の変化、センサーカメラなどで確認します。
穴の中をのぞいたり、手を入れたりしないでください。
7.餌を与えず、近づかない
キツネを見かけても、呼び寄せたり、餌を与えたりしないでください。
- 手から餌を与えない
- 写真を撮るために近づかない
- 子ギツネを触らない
- 犬を近づけない
- 弱って見えても自己判断で保護しない
- ふんや死骸を素手で触らない
キツネが住宅地にいることだけを理由に、追い回す必要はありません。距離を取り、餌になるものを片付けます。(札幌市)
8.捕獲は自己判断で行わない
キツネは狩猟鳥獣に指定されていますが、誰でも自由に捕獲できるわけではありません。
狩猟として捕獲する場合は、狩猟免許、狩猟者登録、区域、期間、猟法などの条件を守る必要があります。また、都道府県によって捕獲が禁止または制限されている場合があります。
被害防止を目的として狩猟期間外などに捕獲する場合は、原則として行政の許可が必要です。
市販のわなを自己判断で設置したり、捕獲した個体を別の場所へ放したりしないでください。(環境省)
タヌキやイヌとの見分け方
キツネは、タヌキや小型から中型のイヌと見間違われることがあります。
見分ける際は、姿だけでなく、足跡、ふん、巣穴、移動の仕方、センサーカメラの映像などを組み合わせて確認します。
キツネ
- 体が細く、脚が比較的長い
- 鼻先が細く尖っている
- 大きな三角形の耳が立っている
- 尾が太く長い
- 体は赤褐色や黄褐色に見える
- 足跡は4本指で縦長に見える
- 指先が外側へ広がりにくい
- 足跡が直線的に続くことがある
タヌキ
- 体がずんぐりとしている
- 脚が短い
- 目の周囲に黒い模様がある
- 耳は比較的小さく丸い
- 尾はキツネより短い
- 足跡は4本指で、比較的丸く見える
- 同じ場所にため糞を作ることがある
イヌ
- 体形や毛色に大きな個体差がある
- 首輪や迷子札が付いている場合がある
- 足跡は4本指でキツネと似る
- 指がキツネより広がって見える場合がある
- 人家や道路を頻繁に利用する場合がある
一つの特徴だけで動物種を断定しないでください。(広島大学デジタルミュージアム)
相談するときに確認したいこと
キツネと思われる動物や痕跡を見つけた場合は、可能な範囲で次の情報を記録してください。
- 発見した日時と場所
- 動物の写真や動画
- 頭数とおおよその大きさ
- 親子であったか
- 移動した方向
- 足跡やふんの写真
- 巣穴と思われる場所
- 被害を受けた農作物
- ニワトリなどの被害状況
- 羽毛や食べ残しの状況
- 柵やネットの破損箇所
- 出入りしていると思われる経路
- 被害が始まった時期
- 発生する時間帯や頻度
- 周辺にある生ごみ、飼料、ペットフード
- これまでに行った対策
写真は、痕跡を近くから撮影するだけでなく、被害場所全体と周辺環境が分かるものも残してください。
巣穴へ近づいたり、動物を追いかけたりして撮影する必要はありません。
キツネか分からない場合
動物の姿を直接確認できなくても、足跡、ふん、巣穴、食べ跡、羽毛、侵入場所などから、原因となる動物を整理できる場合があります。
けもの相談所では、写真や被害状況を確認し、必要に応じて現地確認やセンサーカメラによる調査を行います。